家族旅行を悲劇に変えた事故★運命の出会いが導く奇跡


家族で行った初めての海外旅行。
だが、旅行中に起きた事故がきっかけで…絶望の淵に突き落とされる。
しかし…、そんな家族を救ったのは…ある意外なものとの『出会い』だった。

オーストラリア・シドニー在住のブルーム一家。
写真家の夫キャメロンと、妻のサムが出会ったのは、今から32年前のこと。
海とウォータースポーツを愛するアクティブな2人はすぐさま意気投合。
チャンスがあればすぐにバックパックを背負って、世界中を旅し、新しい文化に触れた。

そして、2001年に結婚。
2人は、子供達にも自分たちと同じように、素晴らしい体験をたくさんさせたいと思っていた。
ところが…手のかかる息子が3人も出来ると…。
家事や子育てに追われ、旅行どころではなくなってしまった。

そんな中…結婚から12年後。
末の息子も7歳となり、ようやく家族揃っての海外旅行に行けることになった。
行先は、アジアの国『タイ』。

ホテルのプライベートビーチを満喫し、展望デッキへ。
だがその時!手すりが壊れ、サムは展望デッキから落下!
楽しいはずの旅行は、悲劇へと変わった。
6メートル下のセメントタイルに叩きつけられたサムは、すぐさまバンコク近郊の病院へと搬送されたのだが…
脊椎を損傷し…下半身不随の体となってしまった。
誰よりもアクティブだったサム…彼女はもう2度と自分の足で歩くことは出来ない。

家族の面会が許されると…サムはこう言った。
「ごめんね、私のせいで…。楽しい旅行が台無しになっちゃったね」
彼女の第一声は不平でも不満でもなく、家族旅行を台無しにしてしまったことへの謝罪だった。
自分のことを嘆くのではなく、家族のことを気遣う。
彼女らしいと言えば彼女らしかった。

車椅子のサムが自宅のあるオーストラリアに戻ったのは、事故から7ヶ月後のことだった。
家族はサムを暖かく迎えたのだが…サムは、自分が家に戻ることが家族にとって本当に良いことなのか…不安に思っていた。
車椅子での生活は、すべて誰かのサポートが必要だった。
移動だけでなく、お風呂に入るのも、トイレも…着替えでさえ、自分一人では出来なくなっていた。

それでも、彼女は、決して家族の前で弱音を吐くことはなかった。
よき妻であり、よき母であり、自立した強い女性でありたい…
ずっとそう生きてきたサムは、家族に心配をかけまいと、いつもシャワールームに隠れ、泣いていた。
そんな彼女の気持ちは、家族にも痛いほど分かっていた。
だからこそ、家族からも笑顔は消えていった…

「私は役立たずで、苦しくて、快適な時が一瞬もない」
「前は普通の人生を歩んでいたから、他の人の普通の人生を見るのが辛い」
サムが、感情をぶつけられるのは日記の中だけになっていた。
しかしこの後、意外な出会いによって彼女と家族に変化が訪れる。
そして、写真家である夫は…その『一瞬一瞬』をつぶさに記録していった。

その出会いは、事故からおよそ9ヶ月後のことだった。
それは、生まれて間もない雛鳥だった。
強風に吹き飛ばされて巣から落下、羽根は力なく垂れ下がりひどい怪我をしていた。
傷ついた雛を保護してくれる施設を探したが、すぐには見つからず、放っておくわけにもいかず、家に連れて帰った。
保護したのは、オーストラリアに多く生息するカササギフエガラスの雛だった。
羽根が白黒模様であるという単純な理由から子供たちは、この雛を『ペンギン』と名づけた。

子供達がペンギンの世話係だった。
しかし、子供達が学校に行っている間は、サムがペンギンの面倒をみることになったのだ。
出来ないことばかりの日常の中でペンギンに寄り添うこと…エサや水を与えることは、サムにでも出来ることだった。
かいがいしくペンギンを看病するサム。
ペンギンもまた、サムを誰よりも頼るようになった。
どこに行くのにも、サムの横には、いつもペンギンがいた。

2人で過ごす時間が長くなるうちに…
家族の前では一切愚痴をこぼさなかったサムだったが…
サム「ねぇ、この体で子供たちにしてあげられることないかな?出来れば、ぎゅっと抱きしめてあげたいのよ」
ペンギンの前では、素直になれた。
そして、ペンギンと出会っておよそ1ヵ月後。
ある大きな『変化』が訪れる。
ずっとふさぎこんでいたサムが、自然な笑顔をこぼしていた。

ペンギンと一緒にいることで…ペンギンに話しかけることで、サムの笑顔は増え、家族は元どおりになっていった。
今では日記に愚痴を書くこともなくなった。
シャワールームで泣くこともなくなった。
そしてサムは…ペンギンが飛ぶことを覚え、成長する姿を見ることで…自分にもできることがあると、ジムに通うようになったのだ!

今では、大好きだったウォータースポーツのひとつ、カヌーにも挑戦。
何とオーストラリア代表として障がい者カヌーの世界大会にも出場した。
サムの次の目標は、いつか自分の足で立てるようになり、子供達をもう一度抱きかかえてあげることだという。

ペンギンは、今…。
放し飼いだったため、自由に飛べるようになってからは、1~2日帰ってこないことも増え…そしてある時、急に自然へと帰っていったという。
ペンギンについて、サムはこう話してくれた。
「私がペンギンの面倒をみているようで、逆にペンギンが私の面倒を見てくれていた。素直に愚痴が言えるだけで心が軽くなったわ。」

ペンギンとサムの家族の実話は、現在、書籍化され世界中で出版されている。
野生に帰ってしまったペンギンは、その後どうしているのか?
2015年2月5日、長男ルーベン君の誕生日。
ふいに、ペンギンがサムの家に戻ってきたのだ。
家族とペンギンは今も強い絆で結ばれている。


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