実録!悪魔の犯行★闇に包まれた事件…予想外の衝撃結末


アメリカ、ニューヨーク州。
その日、とある高齢の女性の葬儀がしめやかに執り行われていた。
棺に入った母親を見た家族は、違和感を覚えた。
母の遺体が、妙に小さく見えたのだ。
さらに、約160キロ離れたペンシルバニア州でも…
1ヶ月前に腹部のヘルニアの手術を受けた女性が、突然、原因不明の高熱に襲われていた。
遠く離れた地で、2つの家族が感じた違和感。
この時、彼らは知る由もなかった…既におぞましい事件に巻き込まれていたことを。
やがてその事件は、アメリカのみならず、世界中を震撼させることになる!

今から13年前、バーバラ・マストロマリーノは夫のマイケルと共に、新居を訪れていた。
2人の出会いは大学時代。
歯学部の学生で、大学アメフトのスター選手だったマイケルに、バーバラは出会った瞬間、恋に落ちた。
そしてマイケルもまた、美しくピュアな心を持つバーバラに心惹かれた。
運命に導かれるように、2人は結婚。
その後、マイケルが始めた事業が成功を収め、念願の一軒家を購入したのだ。
2人の息子もすくすくと育ち、何不自由ない生活を送っていた。

夫のマイケルがはじめた事業は、「組織バンク」と呼ばれるもの。
「組織」とは人体の組織。
遺族の承諾の元、無償で提供された遺体から移植用の組織を採取し販売、医療に役立てる。
扱うのは、心臓や肝臓のような臓器ではなく、骨や皮膚・じん帯など。
バンクから提供された組織は、様々な用途で使用される。
例えば皮膚は火傷の治療に。
骨盤や脚の骨はインプラント治療に。
血管や心臓弁などは、命を救う一助となっている。
日本でも組織移植は行われているが、アメリカほど盛んではない。
現在、非営利団体である日本組織移植学会から認定を受けた計13の医療機関でしか組織は保存されていない。
マイケルが設立した企業、バイオメディカル・ティシュー・サービス社は、移植用組織の不足が叫ばれるアメリカで独自のネットワークを構築。
細胞組織の安定供給に成功したのだ。

ハンサムで、妻に優しく、子煩悩。
しかも、人の命を救う事業で成功を収めたマイケルは、まさに完璧な夫だった。
だがバーバラには、一つだけ気になることが…
時間を問わず、頻繁に家を空けるマイケル。
仕事だと信じてはいたが、バーバラには割り切れない思いがあった。
実はその4年前…マイケルに不倫された過去があり、裏切られた記憶は、バーバラの中から消えていなかったのだ。

マイケルは、不安を感じているバーバラを、ある場所に連れて行った。
そこは、マイケルが提供した組織を移植用の医療製品に加工するメーカーだった。
社長は、マイケルを病気で苦しむ人を救う救世主だと評した。
それを聞いたバーバラは、少しでもマイケルの手助けになればと、度々書類の作成を手伝うようになった。
そんなある日のこと…突然、警察が家にやって来たのだ。
さらに、家宅捜索を始めるという!

事は、家宅捜索の9ヶ月前に遡る。
当時、ニューヨーク市警のパトリシア刑事は、葬儀社のオーナーから相談を受けていた。
従業員が約300万円を横領した疑いがあるというのだ。
男の名は、遺体の防腐処理を担当するジョセフ・ニチェリ。
さらに、葬儀社のオーナーはジョセフのことで、他にも気になることがあるという。

葬儀社のオーナーが抱いた「ある疑念」…それを確かめるべく、パトリシア刑事は、過去にその葬儀社を利用した遺族から話を聞く事に。
すると…遺族は『遺体提供の同意書』に、見覚えがないと言うのだ。
さらに、承諾のサインについては…自分のサインではないという!
パトリシア刑事が、過去2年間、その葬儀社を利用した遺族を調査したところ…遺体提供の同意書のサインは、ほぼ全てが偽装されたものだったことが判明!
それだけではない…棺の中の遺体に違和感を抱いていた遺族がいることも分かった。
遺族の許可を得た警察は、すぐに遺体を掘り返した。
その結果、驚愕の事実が明らかになったのである。

これが掘り返された遺体のレントゲン写真である。
何と、腰から下の脚の骨が全て抜き取られ、代わりにプラスティック製のパイプが埋め込まれていたのだ!
しかも本物の骨と固定するため、足首はボルトで止められていた!
葬儀社のオーナーが抱いた疑念、それは…防腐処理班のジョセフが遺体から摘出した組織を売りさばいているのではないか、というものだった。
警察は、ジョセフが遺体の提供同意書を偽造し、無断で骨や組織を摘出。
パイプなどを入れて、遺族に気づかれないようにしていたと推測した。

警察は、すぐにジョセフの身柄を拘束。
だが、ジョセフは自分は頼まれてやっていただけだと供述。
「本当の悪魔はあの男だ!」と主張した。
ジョセフの言う悪魔の正体が…バーバラの最愛の夫であり、彼女のヒーロー、救世主とまで言われた…バイオメディカル・ティシュー・サービス社社長、マイケル・マストロマリーノだった!

捜査の結果、バイオメディカル社の遺体調達ネットワークは、ニューヨークを始め、3つの州にまたがり、計17もの葬儀社が組織の不法採取に協力していたことが判明。
被害にあった遺体の数は、4年間で実に1077体にも上った。
そう、バイオメディカル社の急成長の理由は、遺体から次々と無断で組織を抜き取り、売りさばいていたことによるのだ。
だがマイケルが行った悪魔の所業は、これだけではなかった。
その後警察がマイケルの会社や自宅から押収した資料を調べたところ、とんでもない事実が明らかになる!

パトリシア刑事が調べていた資料…それは、遺体の死因や年齢が記された「死亡証明書」だった。
アメリカでは、遺体を移植目的で提供する場合、安全のために厳しい基準が設けられている。
1.死後15時間以上経過した遺体
2.重篤な疾病や癌患者
3.感染病(HIV・C型肝炎など)の疑いがある者
そのため、遺体を提供する際には必ず、病院が発行する死亡証明書を提出する必要があるのだが…
その証明書を発行した病院自体が存在せず、全くのでたらめだったのだ!

架空の病院名で死亡証明書を偽造。
さらに!遺族への調査により、被害にあった遺体には、ガンなどの重大疾患で亡くなった者だけでなく、梅毒やHIV感染者の遺体まであったことがわかったのだ!
移植製品の加工メーカーには、組織バンクから提供される細胞に異常が無いか、検査する義務がある。
だがマイケルは、その検査に使われる血液サンプルを別人の物にすり替え、異常に気付かせないようにしていた。
そう、腹部のヘルニアの手術後に原因不明の高熱に襲われた女性も…
移植によって、感染症に汚染された細胞を提供された一人だったのだ!

これを受け、移植医療を監督するアメリカ食品医薬品局は、すぐにバイオメディカル社が関わる製品の使用停止を勧告。
だが…遺体から採取された細胞組織は、5万品もの医療用品に加工され、じつに2万5千人以上に移植された事が判明。
つまりその全員が、既に命に関わる感染症に侵されている可能性があり、そこからさらに感染が拡大する危険さえあったのだ!
しかも、汚染の可能性がある製品は、アメリカだけでなく、カナダやオーストラリア、韓国、ヨーロッパ各国にまで輸出されていることが発覚。
前代未聞の事件に、世界中が震撼した!

各国のマスコミが、マイケルとバイオメディカル社の悪魔のような所業をこぞって報道。
それに最もショックを受けたのは…妻のバーバラだった。
しかも…書類の作成を手伝っていた時、マイケルはバーバラに死因を記入させていた。
死亡証明書は複数の人物が書き込むような形式だったため、筆跡を変える必要があったのだ。
バーバラは、知らぬ間に、悪魔の片棒を担がされていた。
マイケルが立ち直ったと信じていたバーバラのショックは大きかった。

実はマイケルには不倫以外にも、隠された過去があったのだ。
それは、組織バンクをたちあげる6年前のこと。
当時のマイケルは、優秀な歯科医だった。
ニューヨークのど真ん中に歯科医院を開業。
多くの患者から支持され、書籍も出版するほど著名に。
3台の高級車に一等地に立つ豪華なマンション、さらに美しい妻に2人の息子、まさに幸福の絶頂にいるかに思われた。

だがこの時、既に悪魔は忍び寄っていた。
マイケルはアメフト選手時代に痛めた背中に、自ら鎮痛剤を打っているうち、重度の薬物依存に陥ったのだ。
そしてこの頃、アシスタントの女性と関係を持つなど、私生活ではすっかり堕落し…
ついには、勤務中にまで薬物を使うようになり、医師免許は剥奪。
住んでいた豪邸も手放すことになってしまった。

それでもバーバラは、夫を信じ、支え続けた。
それに応えるようにマイケルは薬物依存から脱却。
歯科医時代の経験から、歯に加工される移植用の骨に着目し、組織バンク・バイオメディカル社を立ち上げた。
だが、事業は直ぐに壁にぶつかる事に…。
当初マイケルは、遺族からきちんと同意を得ようとしていた。
だが、上手くいかなかった。
歯科医時代のセレブな生活が忘れられなかった彼は…『同意書を偽造せよ』という悪魔の囁きに魂を売ってしまったのだ!

マイケルは、ニューヨーク市内の葬儀社や火葬場を勧誘。
遺体提供1体に付き、およそ10万円という条件で買収し、遺体供給の一大ネットワークを形成。
なに食わぬ顔をして、バーバラや家族と接する一方…
部下のリーたちを使い、遺族の同意を得ないまま、遺体から様々な組織を盗んでいたのだ。
同意書を偽造するだけで、もたらされる莫大な利益。
それがさらにマイケルの心を狂わせた。
ガンでも、HIVでも関係なく組織を採取し、黙って売りさばく…
まさに、悪魔のような所業に手を染めていったのだ!

裁判の結果、マイケルの指示のもと遺体を解剖していたリーには懲役8~27年。
遺体を無断で提供し、解剖にも加わった、葬儀社のジョセフには、懲役8~24年の判決が下された。
そして…死の錬金術師マイケル・マストロマリーノは…遺体の窃盗や文書偽造など、122件もの罪で起訴され、懲役28~58年が言い渡された。
それから5年後の2013年。
マイケルは、刑務所の中で死亡。
死因は…ガンだった。


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